前回のブログで、法人税等の調査事績について紹介しました。
今回は、令和6事務年度の所得税等の調査の状況について紹介します。
AI活用で追徴税額の総額が過去最高に
国税庁の発表資料によると、令和6事務年度は、選定にAIを活用し、効率的かつ的確に調査等を実施したとのこと。
その結果、「実地調査」と「簡易な接触」を合わせた調査等による追徴税額の総額は、1,431億円(前事務年度比2.4%増)で過去最高を更新しました。
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(出典)「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月国税庁報道発表資料)
「調査等」の種類
国税庁では、「実地調査」と「簡易な接触」を合わせて「調査等」と呼んでいますが、それぞれどのようなものか簡単に説明します。
①実地調査(特別調査・一般調査)
・高額・悪質な不正計算が見込まれる事案を対象に深度ある調査を行うもの
・平均調査日数:10日程度
・1件当たり申告漏れ所得金額:1,486万円(令和6事務年度)
・1件当たり追徴税額:299万円(令和6事務年度)
②実地調査(着眼調査)
・資料情報や申告内容分析の結果、申告漏れ等が見込まれる個人を対象に実地に臨場して短期間で行う調査
・平均調査日数:3日半程度
・1件当たり申告漏れ所得金額:385万円(令和6事務年度)
・1件当たり追徴税額:40万円(令和6事務年度)
③簡易な接触
・原則、納税者宅に臨場することなく、文書、電話等による連絡又は来署依頼による面接を行い、申告内容を是正するもの
・1件当たり申告漏れ所得金額:51万円(令和6事務年度)
・1件当たり追徴税額:4万円(令和6事務年度)
高額な申告漏れ業種の1位は「キャバクラ」
事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位3業種は「キャバクラ」、「眼科医」、「ホステス、ホスト」の順でした。

(出典)「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月国税庁報道発表資料)
高額申告漏れ業種の近年の傾向
「キャバクラ」は、コロナ禍前の令和元事務年度までは常に上位3位以内でしたが、ここ3年間はトップ5から姿を消していました。
今回1位に返り咲いた背景としては、コロナ禍が明けて数年が経過し、国税庁が重点的に調査を行った可能性が考えられます。
一方、令和3事務年度から3年連続で1位だった「経営コンサルタント」は、今回は4位に順位を下げています。
このような順位の変動から、国税当局がその年にどの業種へ重点的に調査を行っているのかが、ある程度読み取れるといえるでしょう。
今回2位に「眼科医」が入った理由については、国税庁の資料からは明らかではありません。
個人的には、個別に大口の申告漏れ事案があったのではないかと考えています。
医療業界では、眼科に限らず、保険適用外の自由診療収入に係る現金売上を除外するなどの不正計算が問題となるケースがあります。
調査の過程で新たな不正計算の手法が把握された場合、同様の取引形態を持つ他の医療機関にも調査が広がる可能性があります。

(出典)「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月国税庁報道発表資料)
まとめ
令和6事務年度の所得税調査では、AIを活用した選定により追徴税額が1,431億円と過去最高を更新し、国税当局の調査精度が一段と高まっていることが示されました。
個人事業者の1件当たり申告漏れ所得金額では「キャバクラ」「眼科医」「ホステス・ホスト」が上位を占め、業種ごとの調査重点が年ごとに変化している様子がうかがえます。
いずれにしても、調査で思わぬ指摘を受けないよう、日頃から正確な記帳と適正な申告を徹底しておきたいところです。
(税理士 平瀬靖典)